ヒカルの碁~未来編~ プロトタイプ版

 

 

 


「ダイチ……」

「なーに、おじいちゃん?」

「碁は好きか?」

「大好き!」

「そうか、私も碁が大好きだ。二度と同じ手は打てない。日々新しい世界が広がる……」

「うん?」

「私も……そしてアキラも、この世界に魅了されてきた。それは良きライバルがいたからだ。
……私のライバルは二度と私の前に現れることは無かったけど……」

「らいばる?」

「ダイチには分からないか。すまないな、お前がこの道を歩くか否かは私にも、父さんにも決められないことだ。
ただ……お前が情熱を注げる何かを見つけ、それを直向きに進んでいきなさい」

「じょうねつ……」


これが、俺が覚えている最後のおじいちゃんの記憶。


+++


「なぁ、ダイチ、これお前の父さんなんだろ?かあちゃんが言ってた。すげーじゃん、新聞になんか載っちゃって」
「いいなーダイチ。お父さん有名人じゃん。おじいちゃんも凄かったんだろ?」
「でもさー俺もじいちゃんがやってるの見てた事あるけど、超つまんないよー。ただ、石ころ置くだけだもん」
「ダセーよな」
「ダイチ、お前も囲碁とかいうのやってるの?」


「……やらねぇーよ、あんなもん」

 

俺の名前は、塔矢大地。小学6年生。
プロの碁打ちの息子。親父の実力は今じゃ日本で1,2位を争うらしく、新聞に載る事も珍しくは無い。
クラスメイトの女子は「かっこいい」なんていうけど、実際の所、男らしくない親父でどうも好きになれない。
友達は「囲碁なんか古臭い」と笑う。正直、俺もそう思う。
一日中、盤面と睨めっこして石を取りあいっこするだけなんて肩が凝るだけで何も面白くない。
見た目も地味。どうせ新聞に載るなら、野球選手とかサッカー選手とか、そんなかっこいい親父が欲しかった。
今はもういないが、じいちゃんも相当の実力者だったそうで、周りからは当然のように俺は碁打ちになれと言われてきた。
……誰がなるか、あんなダッセーもんに。俺は二度と碁石は持たない。
そんな誓いを立てて、もうすぐ2年が経とうとしていた―――


「あれ?もしかして、ダイチくん?」
「え?」
ふと女の子が声を掛けてきた。服装を見る限り女子中学生のようだ。
「覚えてない?私、アヤ。進藤彩」

「進藤……あ、進藤本因坊の?」
「やっぱり、ダイチ君ね!ダイチ君、大きくなったね。今何年生?」
「小6です……」
「あれ?私と一つしか変わらないんだっけ。ごめんね。でも懐かしいな何年振りだろ?」

そこに居た人は俺の記憶にあるアヤちゃんとは全く違っていて・・・
背がスラっと高く、表情は赤み掛った整った顔。

「アヤさん?こんな所でどうしたんですか?」
「うん?今からそこの碁会所で肩慣らしをしようと思ってね!」
「碁会所?……アヤさん、もしかして碁、やってるの?」
「うん、プロ棋士になるのが私の夢なの。ダイチ君は?棋力はどれくらいになった?」
「え?棋力……?」
「あれ、前会った時はダイチ君も碁に熱中してたじゃない?……もしかしてもうやってないの?」
一瞬、少し寂しそうな潤んだ瞳を見せたアヤさんに俺はドキっとしてしまった。
「……あ、いや、そんなことないけど……そんなに強くないかな……」
「そうなの?ねぇ、今忙しい?せっかくなら一緒に碁会所行かない?」
「え?え、えと……」
久々に会ったアヤさんはとても美人になってて、一緒に行かないかって誘ってくれているわけで。なんかここで断っちゃうのも、もったいない気がする……でも、俺は……
「あ、あの、嬉しいお誘いですが、ちょっと今日は急いで帰らないといけないので!」
「そうだったの!?ごめんね、引きとめちゃって」
「あ……」
「ここで会ったのも何かの縁かもしれないね、今度一緒に打たない?」
「え?」
「碁」
「あ、はい、えーと……はい、お願いします!」
「本当?わー嬉しい。じゃあ、今度連絡するね!」
「はい!失礼します!」
俺は顔が真っ赤だった。これが世にいうヒトメボレというものなんだろうか?
アヤさんと話してるのが段々気恥しくなって、走って逃げてきてしまった。

家に帰り、冷静になった俺はあることに気付いた。

「連絡するって……俺、ケータイの番号とか教えてないぞ!?」


さよなら俺の初恋……


数日後
棋院エレベーター内
「なぁ、塔矢……」
「なんだ?」
「お前の息子、名前なんだっけ」
「大地だが?どうかしたか、進藤?」
「ああ、やっぱそうだよな。……彩がそのダイチに会いたいとか言ってるんだけど」
「アヤちゃんが?」
「何でも、街で偶然再会したんだってさ。お前の息子と碁を打つんだってはしゃいでた」
「え?ダイチがか!?まさか、何かの間違いだろう」
「そうか?」
「一週間前にも『囲碁なんかダサイ』なんて言われたばかりだぞ、僕は……」
「なんだ、お前の事だから碁ばかり教えてるんだと思ってたぜ」
二人は会話を続けながら、エレベータを降りる。
「まぁ、親が全て決めてしまうのは間違っているだろう?僕はたまたま父さんが通った道が好きで選んだけど、ダイチが興味ないんじゃ」
「とりあえず、お前のとこの野郎じゃないんだな?最近、アヤに近寄ろうとする男がやたらと多くてな。お前の所の奴だったらボッコボコにしてやろうと思ってたんだ」
「ボ、ボッコボコ!?」
「……進藤、相変わらずの親バカだなぁ」
「和谷!」
ヒカルが振り向くと、そこにはニヤニヤと笑みを浮かべた和谷が立っていた。
「ああ、和谷君、おはよう」
「おう、塔矢、久々だな」
「和谷!お、俺は、別に親バカなんかじゃないぞ……ただ、まぁ、その、娘に変なハエがたかってたら追い払いたくなるだろ……」
「それを親バカっていうんだぞ、進藤。な、塔矢?」
「まったくだな……」
「なんだ?何の話だ?」
「あ、伊角さん。いや、相変わらず進藤が親バカでさ」
「また病気が出たのか?進藤がこんな親バカになるとは俺も思わなかったな~」
「だろ?」
「ふん、娘離れ出来てないようじゃ、気が散って本因坊のタイトル落とすんじゃないの?」
「越智!」
「この間の名人戦では負けたけど、この様子じゃ本因坊リーグでは本因坊様自ら自爆してくれそうだな」
「相変わらず嫌みな奴だな、お前」
「それと、君の娘も院生になるそうじゃないか?」
「ああ、この間合格したばかりだ、来週から通うぜ?というかお前なんでアヤの事知ってるんだ?」
「うわ、ここまで来ると親バカってレベルじゃないね。僕の子供は今、院生で2位なんだけど、この間『進藤プロの娘がきた』って騒いでたからな」
「2位って所が越智の息子っぽいよな」
「何か言ったか、和谷?」

 

そんな親父たちの会話を知らない俺は、「なぜ連絡先を聞かなかったんだ!」と自己嫌悪になっていた。
あの再会から数日、俺は暇ができるとついついアヤさんの顔が思い浮かんでしまう。
つまらない国語の時間なんかが最高の妄想時間だ。

「ダイチ?電話よー」
「電話?家電に?……相手誰?」
「あら、進藤君の所の御嬢さんよ~」
「ア、アヤさん!?」
家電に電話なんて……なんて古典的な展開なんだ……!
「も、もしもし?」
「あ、ダイチ君。この間は引きとめちゃってごめんね」
「え、いえいえ、そんなことないですよ。僕も久々にアヤさんと話せて楽しかったです」
「本当!?実はね、腕が高そうな人が集まってる碁会所教えてもらったの。ダイチ君、一緒に行かない?」
再びお誘いが!これは絶対逃しちゃいけないチャンスだ!
「は、はい!僕も一緒でいいのなら!」
「嬉しい!今度の日曜日なんてどう?時間ある?」
「は、はい、日曜日ですね、大丈夫です!」
「じゃあ、日曜日に市ヶ谷駅前で待ち合わせね!」
「はい!市ヶ谷ですね!」
「楽しみにしてるね、じゃあね!」
「し、失礼します!!」
プープー
「アヤさんとデートキタァァァァァ!」

……しかし、暫くするとある事に気づいてしまった。

「お、俺、もう、碁なんかほとんど打てないぞ……?」

既にルールもあやふやだ。これでは見苦しくてかっこ悪い姿をアヤさんに晒すだけじゃないか……!

……いやでも、アヤさんとお近づきになるには……
こ、これはもう手段を選んでる暇は無い。残された猶予はあと5日なのだから。

「親父!俺に碁を教えてくれ!」

こんな不純な動機で俺は再び碁石を持った。
……もう二度と触れないと誓ったはずの碁石に―――

 


そんなわけで書いちゃいました、ヒカ碁未来編。
ヒカルが想像以上の親バカになってしまいました。どんだけ娘LOVE。
ちなみに、彩ちゃんの名前の由来は「彩⇒サイ⇒佐為」です。分かりやす!

未来編っと言っても、具体的に西暦何年かっというとそこまでは考えていません。
まぁ、ヒカルとアキラは大体35歳前後ってところですかね。
ヒカ碁自体、今から約10年前に連載されていた作品なので、逆算すると、今から大体12~13年後ぐらいかなっと。これぐらいアバウトな認識です。
といっても、未来のことはよくわからないので、大体現代に置き換えて考えています。
ただ、もうダイチの世代だったら、小学生が携帯電話持っているのが当たり前かと。今の小学生もほとんど持っていますし。
家の電話は契約書とかを書く時にしか使わないっみたいな感じかなと。
なので「ケータイ番号教え忘れた=もう連絡する手段がない」て思考になってもおかしくないかなと。「家電に電話」なんて昔の話なのでは?っということで「古典的な展開」とか言ってみました。家電って言い方が存在してるかも謎ですが。
それにしても、ダイチくんのモノローグ。北の国からの純くんみたいになってますね…(苦笑)

ダイチ君は、幼いころは碁をやっていました。熱中もしていました。
しかし、お爺ちゃん(行洋)お父さん(アキラ)が偉大過ぎて、周りからのプレッシャーに負け、碁を捨てたという過去があります。小3、4年生ぐらいまではやってた設定。
そしてこんな不純な動機で再開するわけですが……そのうち、ダイチ君も碁の魅力に気づいていきます。
つまり、本編のヒカルをアキラの息子で再現してみたかったっていう(笑)
ただ、ダイチ君の場合、昔やっていたっということもあり、ヒカルとはまた違う成長をしていくのですが。
反発するだけの存在だった父を段々認めて行くダイチ君をお楽しみください。
ちなみに、ダイチ君は天才肌です。逆にアヤちゃんは努力家タイプ。(ヒカルの才能はあまり受け継がなかったようです 苦笑)
いつしかダイチ君の方が棋力が高くなっていたり……
恋の相手がいつの間にかライバルになってしまって悩むダイチ君、ライバルとなることでダイチは友達ではない違う存在だと気づき恋に発展するかもしれない(?)複雑な境地を抱くアヤちゃん。二人の恋の行方はいかに!?

みたいな話になる予定です。
そして合間合間に大人になった本編組を描けたらなと思っています。
とりあえず、現代最強の棋士は緒方さんです。緒方さんを倒すべくアキラ達もまた日々鍛錬を重ねております。

こんな感じで書けたらなと思います。
「あのキャラのこんなシーンがみたい!」というリクエストも受付中。
例えば「筒井さんを出して」とか(笑)筒井さん、どんな大人になっているかな?……これたった今浮かんだ思いつきなのですが、想像を練っていくと面白そうですね……!

 


【登場人物紹介】

塔矢 大地(とうや だいち)
小学6年生の男の子。
祖父は塔矢行洋、父は塔矢アキラと囲碁の名家の生まれ。
幼い時は碁に興味を抱くが、周囲からのプレッシャーに負け、碁を捨てる。
しかし、彩との再会をきっかけに再び碁石を握る。
碁のセンスは良く、次第に天性の才能を発揮する。

進藤 彩(しんどう あや)
中学1年生の女の子。葉瀬中学校に通っている。
父は進藤ヒカル本因坊。かなりの美人さんで男子にモテる。
プロ棋士である父に憧れ碁を始める(現在は思春期の為、「女流名人に憧れて」と本人は言い張る)
棋力も高く、今年から院生になる。
残念ながらヒカルからはあまり碁の才能は受け継がなかったが、努力と丹念で腕を上げた相当の努力家。
次第に自分の能力の限界を感じるようになる。

越智の息子(名前募集中)
中学3年生。院生1組2位の男子。
越智王座の息子。


進藤 ヒカル(しんどう ひかる)
彩の父親。現在は本因坊のタイトルを持つプロ棋士。
重度の親バカ。
娘の彩に付きまとうハエ(男達)を追っ払うことに執念を燃やしている。
囲碁界の戦国時代と呼ばれ、タイトルをとってはとられるを繰り返している世代の棋士だが、
本因坊の座だけは決して譲らない。
その執着ぶりから「桑原本因坊2世」とも呼ばれている(主に、週刊「碁」の記者達から)

塔矢 アキラ(とうや あきら)
大地の父親。名人のタイトルを持つ。
息子に嫌われている事が悩みの種。

和谷 義高(わや よしたか)
現在八段。あと一歩タイトルに届かない。
妻子あり。しかし子供達は碁に無関心。

伊角 慎一郎(いすみ しんいちろう)
現在十段のタイトルを持つ。妻もプロ棋士。子供はいない。
もう結構いい歳なのだが、九星界の先輩、桜野さんには相変わらず「慎ちゃん」と呼ばれ、可愛がられている。実はちょっと恥ずかしい。

越智 康介(おち こうすけ)
王座のタイトルを持つ。息子が二人いる。
次男は全く碁に興味を抱かなかったが、長男は現在院生。

奈瀬 明日美(なせ あすみ)
元院生。
現在は日本棋院の事務員として働いている。

緒方 精次(おがた せいじ)
現在の囲碁界最強の棋士。棋聖を始めとした様々なタイトルを持っている。
娘(21)がおり、現在人気モデルとして各誌で活躍中。

芦原 弘幸(あしわら ひろゆき)
自称「アキラの友達」のプロ棋士。
おちゃめ(?)な性格は相変わらずだが、棋力は相当のもの。
奥さんは鬼嫁らしく、顔が上がらない。


現在、脳内設定が出来上がっているのは以上の方々です。
一応、ダイチくんとアヤちゃんのラブコメを目指しているのですが、筆者が暴走すると親父Sの会話が増えます(爆)
越智の息子の名前募集中。一応、キーマン……になりそう?
緒方先生の娘さんはスーパーモデルという設定(笑)
彼女もなんらかの形で本編に登場させたいな。碁一色になりそうな時の緩和剤的役割(笑)
 

こんな感じで書いてます!アイディア募集中です!

 

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