君の為に、貴方の為に 序章

 

 

 

なんだ、お前は鬼に生まれたことを誇りには思っていないのか?―――

 

 

鬼として生まれたことが誇りだと、そう信じて疑わない男鬼が目の前にいた。

 

 

 

 

 


+++


「お千ちゃんお千ちゃん、遊ぼう!」
「うん!」

私には仲がいい友達がいた。お雪ちゃん。
誰とも隔たりをつくらず、いつもみんなに囲まれてる明るい女の子。
引っ込み思案だった私も、お雪ちゃんに引っ張られ、毎日のように遊んでいた。
次第に私も明るい性格になってきて、それまで私を心配していた周囲から安堵の声が漏れていた。
お雪ちゃんは優しくて、どんな子にも同じように接してくれる。
だからなのかな、私は母様からきつく言いつけられていた約束を破ってしまった。

「お雪ちゃん、待ってよ!」
「お千ちゃん早く早く!鬼に捕まっちゃうよ!」

「かくれんぼ」という遊びをしていた。
鬼が一人いて、その鬼から隠れるという遊び。人間の童が大好きな遊びだった。

「お千ちゃん、ここに隠れよう!」
お雪ちゃんは森の入口に身を潜めようとしていた。
「うん!」
私もお雪ちゃんの所へ急ごうと走った。すると、木の根に足を囚われてしまった。
「きゃっ!」
「お千ちゃん!?」
お雪ちゃんは慌てて私の元へ駆け寄る。かくれんぼという遊びは忘れ、心から心配してくれたようで血相を変えた顔をしていた。
「お千ちゃん!凄い傷!母上を呼んでくる!」
「あ、お雪ちゃん、大丈夫だよ。ほら、すぐ傷治るから」
「え?」
瞬く間に私の膝小僧に出来た傷は塞がっていく。
その様子をお雪ちゃんは凝視していた。
「どうして?そんな早く?」

あーあバレちゃった。私は心の中でそう呟いた。
私は鬼――。人間とは比較にならないほど治癒力が高い。これが私の秘密。
鬼なんて分かったら、人間は寄ってこない。これまでも何人もの友達が私から離れて行った。
でも、お雪ちゃんなら……
誰とも隔てなく接してくれるお雪ちゃんならきっと……
それに、私の秘密を友達と共有できたら……それは私がずっと持っていた憧れであり願いだった。

「あのね、お雪ちゃん、私、鬼なんだ」
「鬼……!?」
「鬼だから、怪我の治りが早いの。でもね、これは秘密なの、お雪ちゃんも……」
そこまで言うと、ガサガサと草が音を立てた。
え?と私が顔を上げると、お雪ちゃんの顔は強張っていた。
「嫌、来ないで!」
「え?お雪ちゃん?」
「ごめんなさい、怪我させちゃって、でも許して下さい!」
「何言ってるのお雪ちゃん?私は何も変わらないよ?今までと同じように」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
お雪ちゃんは走ってその場から去っていった。気がつけば一緒に「かくれんぼ」をしていたみんなもいなくなっていた。

ああ、やっぱりそうなんだ。
たとえどんな人間でも、鬼を受け入れてはくれないんだ……

「母上、お菊、約束を破ってごめんなさい……」


+++

「じゃあまたお会いしましょう、千鶴ちゃん」

私を浪士から助けようとした男装した女の子。
私は彼女の名前に息をのんだ。彼女は言った、自分は「雪村千鶴」だと。
雪村……それはかつて東国一の勢力を持っていた、由緒正しき鬼の姓。
そして彼女が腰に帯びていた刀、あれは雪村家に伝わるという一組の太刀の一つではなかろうか?伝聞でしか聞いていないが、あの漆黒の鞘に金で雪村家の紋章が描かれているあの刀はほぼ間違いないはずだ。

「お菊」
「なんでしょう、姫様」
「新選組と行動を共にしている女鬼がいるみたいなの、調べてもらえる?」
「新選組に・・・・・・?はい、承知いたしました」


数日後――

「雪村千鶴。彼女はほぼ間違いなく、あの雪村家の生き残りとみて間違いなさそうです」
「そう……あの雪村家の……」
「倒幕の折、滅ぼされたと聞いておりましたが、調べた結果、雪村本家に千鶴という名の娘がいたことは事実のようです」
「そんな子が何故、新選組に?それに隊士という風ではなかったけれど」
「どうやら彼女は江戸に住んでいたものの、京に出た父親を捜すために京を訪れた所、新選組に身柄を預けられた、とのことで」
「うーん、一度、彼女から詳しい話を聞いてみた方が良さそうね。今の京は治安がいいとは言えない、鬼にとってもね」
「ええ」
「それにしても、よくそこまで調べられたわね、さすがお菊!」
「いえ、最近、お座敷で新選組の方のお相手をすることが増えまして。お酒に弱い方や口が緩い方が多くて、それとなく聞いてみたらポロッと」
「あらあら、京の治安を維持するための組織なのに、それは大丈夫なの?」
「剣の腕は立つようですから」
お菊はクスっと笑みを浮かべる。
「千鶴ちゃんかぁ……」
同じ鬼である彼女なら、私のことを受け入れてくれるのかもしれない?
その時は私も、彼女を「女鬼」としてしか見ていなかった。今思えば、彼と同じように、私もまた、彼女を利用しようとしていた鬼だったのかもしれない―――

 

序章です。というかまだ小説と呼ぶような体を成していませんが。セリフの羅列でスマソ。こんな感じの話を練ってます。
風姫と言っておきながら、風間さん全く出てこない\(^o^)/
ま、まずは千鶴とのフラグ立てから。
風姫とはまたマイナーな……とは思うのですが、某ルートで萌えたぎった結果、ハマってしまいました。あのルートの風間さんマジかっこよすぎる。惚れます。
「鬼の誇りの為、鬼の一族の為に」を第一に考える風間さんらしさが一番出てたルートだと思いました。
あとやはり、「お姫様を助けにいく」というベッタベタ展開が好きというのもあり、某氏に敵意むき出しにする千景様に惚れました。かっこいいよ・・・!
あとあと、君菊さんの「姫様を鬼だと知っても友達だと言ってくれたのは、私が知る限りあなただけだから」というセリフも好きです。
千鶴はたとえ自分が鬼じゃなくてもお千ちゃんを受け入れたと思います。
だからまず、千鶴ちゃんとの友情を描き、そこから風間×千姫に発展させようと思いこのような話になりました。
次では風間さん出したい・・・な!(苦笑)

ちなみに、
お酒に弱い人→土方さん
口が緩い人→永倉さん、平助君
のことです(笑)
たくみな話術で色々聞きだしたんだと思います。
あと、千鶴がお座敷に来た時(制札事件後)に本人にも探り入れたんだと思います。

※口が緩い人の場合
原田「おっと悪りぃ。ちょっと厠行ってくるわ」
永倉「おお!すまねぇ左之!お前がいない間、君菊さん独占させてもらうわ!」
原田「……新八、てめぇ……」
藤堂「新八っつぁん、俺もいること忘れんなよ!」
永倉「何をー!お前みたいなガキにゃまだ早ぇーよ!お前にゃ千鶴ちゃんぐらいが丁度いい」
藤堂「な、なにいってんだよ!?俺は別に……!」
原田「おい、千鶴ぐらいってなんだ千鶴ぐらいって。新八、お前はホンット、女を見る目がねぇーな。ま、いいや、とにかく厠に行かせてくれ」
永倉「ゆっくりしてこいよー!」
原田「バーカ、すぐ戻ってきてやるよ!」
君菊「そうそう。最近、聞きましたえ。何でも新選組には可愛らしい隊士はんがいらはるとか?」
藤堂「可愛らしい隊士……?」
永倉「ああ、千鶴ちゃんのことか!これがな、可愛い上に健気ときた!」
藤堂「ちょ、新八っつぁん、まさか千鶴の事……!!」
永倉「ん?どうした平助?」
藤堂「な、なんでもねぇーよ!」
君菊「あれま、そんなに苦労されはってるんどすか?」
永倉「姉ちゃん、聞いてくれよ。千鶴ちゃんはな、京に出て行方が分からなくなった親父さんを探しにはるばる江戸から一人で旅してきたんだとよ。くぅ~泣けるねぇ」
君菊「まぁ、江戸から。そら、えらい遠くから……父上を探しに新選組に……?」
永倉「いやな、彼女は運が悪くてな、俺達のひ」
藤堂「新八っつぁん!……ちょっと酔いすぎじゃねぇーか?それ以上は」
永倉「おっとやべ。姉ちゃん、今のはここだけの話だぜ?」
君菊「当然です。芸妓は口が堅いものですき。安心して下さいまし」
永倉「お、すまねぇな。頼むぜ」
原田「おーい、なんだ、独占するとか言ってた割には盛り上がってねぇーじゃねぇーか?もう潰れたか?」
永倉「俺はまだ潰れてねぇ!なんだ、左之、久々に一勝負するか?」
原田「いいのか?この状況じゃどう考えても俺の勝ちみたいだが」
藤堂「お、飲み比べなら俺も混ぜてくれよ!俺も新八っつぁんに負ける気がしねぇ」
永倉「おし!じゃあ姉ちゃん、たんまり酒持ってきてくれ!」

的な展開?(長)
すみません、京言葉分からん。君菊さんの言葉づかい分からん・・・!
てか、頭から「厠」とか品がないセリフで申し訳ない。
ただ、左之さんはガード堅そうだから、左之さんがいなくなった隙をついて話題を出す君菊さんを書こうと思ったらこうなった(苦笑)

 

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