浅黄色の証

 

 

 

西本願寺から不動堂村屯所にお引越しの時のエピソード。

 


 

千鶴「山崎さん」
山崎「雪村君?どうした、移転の準備はいいのか?」
千鶴「はい、私、元々荷物が少ないですから。それより山崎さん、昨晩も遅くまで任務に当たられていましたよね?」
山崎「あ、ああ」
千鶴「ですから移転準備が終わっていないんじゃないかと思い、お手伝いできたらと……」
山崎「え……」
千鶴「で、でも、やっぱりご迷惑ですよね。勝手に物を触られるのも嫌ですよね」
山崎「いや、そんなことないさ。俺個人の荷物は少ないんだが、医療器具や本などが多くてな。正直、一人では手に負えないと頭を悩ましていた所なんだ。君が手伝ってくれるというならとても助かる」
千鶴「本当ですか!?じゃあお手伝いさせて頂きます!」
山崎「ありがとう。……しかし、君はどうしてそこまで張り切っているんだ?」
千鶴「え!?えっと……お掃除が大好きなんです……?」
山崎「……そうか……?」

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千鶴「この木箱……」
山崎「ああ、それか?」
千鶴「何か大切なものが入っているんですか?」
山崎「大切……そうだな、俺にとっては大切なものだろうな」
千鶴「なら、より一層、慎重に運ばないとですね!」
山崎「その木箱は少し重いぞ。大丈夫か?後で俺が運んだ方が……」
千鶴「大丈夫です、そんなに重たくないですよ!で、でも、ちょっと前が見えにく……きゃあ!」
山崎「雪村君!?大丈夫か!?」
千鶴「いたた……ああ!木箱は!?中身は!?大丈夫ですか!?」
山崎「はぁ……君は物より自分の心配をしろ。怪我はないか?」
千鶴「私は何ともないです。それより……」
山崎「心配ない。中に入っている物は、落としても壊れたりするようなものじゃない」

千鶴「あ……それは隊服……ですか?」
落とした衝撃で寄れてしまっているが、浅黄色の羽織が入っていた。
山崎「俺は監察方だからな、隊服を着る機会はほとんどない。しかし、その隊服を見ると俺も新選組の一員なんだと再確認することができる。俺にとって、その羽織は新選組であること、武士であることの証なんだ」
まぁ、やっていることは、専ら忍のようなことだけどな。
山崎さんは苦笑する。

千鶴「あ、あの!山崎さん、その羽織、着てみて下さりませんか?」
山崎「え?」
千鶴「隊服を着ている所、見てみたいです!」
山崎「構わないが……」
山崎さんは少し躊躇いながらも、袖に腕を通した。
千鶴「わぁ……」
山崎「どうだろうか?」
千鶴「凄く、似合ってます……新選組という感じです」
山崎「……どーゆー感じだそれは」
千鶴「以前、井上さんに教えて頂いたのですが、浅黄色は武士の覚悟を表している色なんだと。新選組の皆さんはどなたもこの浅黄色の羽織が似合っています。それは皆さんが武士の覚悟ができているからなんだと思うんです」
山崎「武士の覚悟か……」
千鶴「私はそんな皆さんが少し羨ましいです」


武士の覚悟を持った、同じ志をもった者達が集まる場所、それが新選組。
長い時を一緒に過ごしている新選組ではあるけど、どんなに望んでも私は決して彼らの仲間にはなれない。それが少し寂しい。
そんなことを考えていると、ふわっと小さな風が起き、背中が温かくなった。
千鶴「え?」
山崎「君も新選組の一員だ。……俺が着た物で悪いが、君もとても似合っている」
千鶴「………!」
山崎「武士の覚悟、つまり命がけで戦う者に着ることが許される羽織だ。確かに君は戦場では戦えないかもしれない。だが、君が隊士を思う気持ちの強さは他の誰にも負けないだろう。そんな君にも羽織を着る資格があると俺は思う」
千鶴「そんな風に言って下さって……嬉しいです」

 

 

 

 

 

 

+++ 


沖田「なんなのあれ。全然面白くないんだけど」
原田「山崎の奴、あれで天然だから憎めねぇんだよな……」
土方「まぁ、こーゆーことだ。お前らは潔く引き下がりやがれ」
原田「なんだよ土方さん、千鶴取られて悔しくないのか?」
土方「はぁ!?あんな小娘、興味ねぇーよ」
原田「千鶴を小娘呼ばわりとは……土方さんともあろう人が、見る目がねぇな」
沖田「でもよりにもよって山崎君を選ぶなんて。千鶴ちゃんも趣味が悪いというか」
土方「いつもプラプラしてるお前よりはできた男だろ。アイツなら千鶴を任せても大丈夫だ」
沖田「何、父親気取りになってるんですか。言っておきますけど山崎君、土方さんより年上ですからね?」
原田「まぁ、任せて大丈夫とか強がってる親父ほど、祝言の時、酔っぱらって「絶対許さん」とか言ったりするもんなんだけどな。土方さんがどうなるか、今から楽しみだな」
土方「おい、原田。その厭らしい笑い方は止めろ。……とにかく、お前ら!人の部屋覗いてる暇があんならさっさと移転準備を進めろ」


 

黎明録での入隊歓迎会エピソードと羽織エピソードを受けて。山崎さんに隊服着てほしかっただけっていう。そして千鶴ちゃんにも着させたかったっていう。
ベタベタ展開で申し訳ない。でも山千って凄くベタ展開カプだと思う。王道で何が悪い。そして天然だと思う。
最後のオチ部分、最初は平助と斎藤さんもいたのですが、よくよく考えたらこの頃二人屯所にいねぇーじゃんっと気付いて削除(苦笑)

捏造山崎ルートは鳥羽伏見以降を書いているのですが、屯所時代ネタもちょいちょいあります。御陵衛士離隊時のエピソードとか。油小路とか天満屋事件とか。鬼襲撃とか本当は書きたくて仕方がないです。とりあえず、やまちづ萌!

 

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