PHASE-3 

 

 

 

 

 

「あーあーもうずぶ濡れじゃない。あなたも大丈夫?」
「え?」
「そうだお姉ちゃん!すぐ近くに洋服屋さんあったよ。そこで新しい服買った方がいいんじゃないかな?」
「そうね!それがいいわ!」
「お洋服買うの?」
ステラは不思議そうな表情をしているが、ホーク姉妹は気にも留めず話を加速させていた。

「でもステラ、お金持ってない」
「大丈夫よ、シンが出すから」
「ちょっと、勝手に決めるなよ。……でも俺もこの服どうにかしなきゃいけないし、いいよ出すよ」
「本当にいいの?」
「大丈夫。ステラは何の心配もいらないよ」
「うん!」


+++


「いやーん、可愛い!」
「お姉ちゃん、こっちこっち!こっちも似合いそう!」
「ほらステラ、今度はこれよ!」

「おーい女子共、いつまでファッションショーやってるつもりだー?」
「だってーステラ可愛いんだもん、ねーステラ?」
「?」

「ルナ、それぐらいにしておけって。彼女の身元確認もしなくちゃいけないんだろ?そろそろ艦に戻らないと日が暮れちまうぜ」
そうヨウランが声をかけると一様に嫌な顔を見せるホーク姉妹ではあったが、やっとファッションショーはお開きとなった。

 

+++

「えーと、最初居たのはこの辺りだっけ?」

ステラの身元の探る手掛かりはないか。一行は二人が海に落ちた場所まで戻ってきていた。

「ネオ……」
「大丈夫だよステラ。俺達がちゃんと見つけるから、安心して」
「うん!」

「おーいステラーどこだー!」

遠くから聞こえる声。微かに聞き取れるその声にステラは目を輝かせた。

「スティング!アウル!!」

 

+++

「ステラ!お前どこに行って……」
「おいスティング、こいつら見るからにコーディネイターだぜ?」
「こんだけ揃ってるってことは、例のZAFTの奴ら……かもな」

「誤って海に落ちちゃったんです。でもこの子のことよく分からなくて、どうしようかと思ってたんです」
「それは大変お世話になりました」
「ステラ、お兄さんが見つかって良かったな」
「うん!ありがとうシン!」
「ステラ……」

「行くぞステラ」
「うん、スティング」
「じゃあね、もう海に落ちたりしないようにね」
「待って!シン、行っちゃうの?」
「え?あぁうん……でもきっとまた会える、てか会いに行く」
「うん、約束ね」
「おいステラ行くぞ!」
ステラはスティングに腕を掴まれ、引きずられるようにこの場を去っていった。

「さて、お守も終わったことだし、そろそろ夜の街に繰り出しますか!」
「賛成!オーブって地球の中ではかなりの先進国なんだろ?」
「まったくこれだから男は……女の子も楽しめるお店にして頂戴ね!」
「分かってますよルナ姉さま。シン、どこかいい店知ってるか?案内してくれると助かるんだけど」

「悪い、俺は艦に戻るよ」

「シンは戻るのかよー。了解」
「悪いな。俺の分も楽しんでこいよ」
「了解であります!」
「なにそれーあはははは」
「…………」


+++

シン「こんなに綺麗じゃなかったのに……」

ルナ達と一緒に騒いでいれば忘れられるかもしれないと思った。
だが、この場所を訪れた途端、胸が張り裂けそうな思いに襲われる。
やはりだめだ。忘れられるはずがなかった。この憎しみの場所を――


「慰霊碑……ですか……?」

気がつくと、シンは石碑の前に立っていた青年に声をかけていた。

「そう……みたいだね。僕もここは初めて来たから……でもせっかく綺麗に花が咲いたのにこれじゃ枯れちゃうね」
「誤魔化せないってことかも」
「え?」
「いくら花を植えても人はまた吹き飛ばす」
「君……」
「すみません、変なこと言って。失礼します!」

シンは足早に慰霊碑から去っていった。

「人はまた吹き飛ばす、か……」

 

 

+++





「キラ……その格好は……」
カガリの悲鳴に近いような声が響いた。

「オーブ軍に志願したんだ」

それもそのはず、キラが纏っていたのはオーブの軍服だったからだ。

「なんで!」
「カガリが頑張っているから。僕にできることは何だろうって考えたら」
「……モビルスーツに乗るのか?」
「配属はCICにしてもらったけど……情勢が悪くなったら僕も乗る事になるだろうね……僕には力があるから……」

<力だけが僕のすべてじゃない!>
再び僕が力を使ったら、全てあの人、ラウ・ル・クルーゼの思い通りではないか。
そう思い、戦いから逃げ続けてきた。
けれど先日、ラクスが襲撃された時、僕は何もできず、ヒルダさんに護られるだけだった。
もし僕が再びモビルスーツに乗る事になったら、僕は運命から逃れられないということになるのだろうか……戦うことが僕に与えられた役割だと、受け入れるしかないような気がした。

「すまない、私が不甲斐ないばかりに……」
「やめて。カガリは頑張りすぎてるぐらいだよ。僕こそ、今まで何もしてあげられなくてごめんね」
「キラ!……オーブは二度と焼かせない、戦場にしない」
「うん、カガリならきっとできるよ。僕も支えるから、ね?」
「うん」

 

 


+++







「一刻も早くオーブを脱出しろミネルバ」
その頃、ミネルバには謎の通信が届いていた。



「司令部からの連絡はなきままであるが、これよりミネルバはオーブを出発します」
「はい!」
「コンディションイエロー発令」
「コンディションイエロー発令。パイロットはブリーフィングルームへ向かって下さい」
 


■あとがきと云う名の言い訳
大変お待たせいたしました。PHASE-2、3の更新です。
シンとステラの邂逅、シンとキラの邂逅、キラの戦う覚悟の三本を軸に書いてみました。
まずシンとステラの邂逅。
TV本編の二人でドッキドキもええですが、
今回は今後の展開も鑑み、ミネルバクルーみんなとデートという話にしてみました。
ちなみに、この案は読者のいわおさんのご意見も反映させております。ご協力ありがとうございます!

次にシンとキラの邂逅。
ステラをオーブで出会わせるっという案に至ってから悩んだのが、キラとの出会いのタイミングです。
キラは終盤大事な役目を担ってもらうことになるので、シンとの邂逅は必須。
だけど、ステラと出会うことも物語を盛り上げる要素なのに、そこにキラまで組み込んでいいのかと。
でもやっぱりオーブという地で二人を引き合わせたい。
お腹一杯にならないか悩みました。が、なんとかバランス良く収まった・・・かな?

最後にキラの戦う覚悟。
SEED(無印)で「戦うだけが僕の全てじゃない!」と言ったキラですが、再び戦う道を選ぶことになります。
キラに課せられた運命は「戦うこと」なのではないか?というスタンスで話を構築してみました。
果たしてキラはその運命を乗り越えられるか。今後注目して頂きたいポイントです。

長々と語ってしまいましたが、ここまで読んで下さり誠にありがとうございます。
次回こそアスラン登場の予定です。どうぞお楽しみに。

 



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