「そんなこと言わないで下さい!」

 

 

千鶴「そんなこと言わないで下さい!」
山崎「雪村君……」
千鶴「私はあの時、山崎さんに変若水を渡すかどうか迷いました。でも今なら迷いません、山崎さんが生きてくれてて本当に良かったと思っているんです。だから決して「何もできない」なんて言わないで下さい。」
山崎「雪村君……俺はまだ新選組にいていいのだろうか?」
千鶴「当たり前です!」
山崎「そうか……」
山崎さんは小さく呟いた。顔を覗き込むと微かに笑っているように見えた。
山崎「君の気持ちが少し分かった気がするよ」
千鶴「私の気持ち?」
山崎「何か手伝いたいと思っても、自分が足手まといになってしまう。それがこんなにも辛いことだと思っていなかった」
千鶴「はい……」
山崎「それと、沖田さんの気持ちも分かった気がするんだ」
千鶴「沖田さんですか?」
山崎「あの人は近藤局長をとても尊敬している。局長の為に刀を振るっている。それが、病気の為にできない。俺以上に歯痒い思いをしているのではないかと」
千鶴「そうですね。飄々としていても、近藤さんの事になるととても真剣な目をされる方ですもんね。きっと辛い日々を過ごしているのでしょうね」
沖田さんの症状は悪化の一途を辿り、今や剣どころか歩き回る事すら困難なのだと、土方さんから聞かされていた。

 

山崎「俺は幸せ者なのかもしれないな」
千鶴「幸せですか?」
山崎「君と言う同志がいると思うと、心が落ち着く。先程は弱音など吐いてすまなかった。恥ずかしい限りだ」
千鶴「いえ、私は山崎さんに元気になってもらいたいんです。どんなことでも、思ったことは話して下さい。私でよければ……ですけど」
山崎「ああ、頼む」


 

土方「山崎、それに千鶴。少し話がある」
千鶴「私もですか?」
土方「そうだ」
山崎「行くぞ、雪村君」
千鶴「はい!」

土方「山崎、体の調子はどうだ?」
山崎「はい、鳥羽伏見の戦いで受けた傷はほぼ癒えました」
土方「そうか……」
暫し沈黙の時が流れる。
土方「単刀直入に言う。山崎、お前を監察方の任務から外す」
山崎「………仕方ありません。日の下ではまともに動けず、いつ狂気に狂うかわからない身で務まる任務ではないと覚悟していました」
土方「だがな、お前には大変重要な任務に就いてもらいたい」
山崎「重要な任務?」
土方「山崎、お前には、千鶴の護衛役を任せる」
千鶴「私の護衛?」
土方「新政府軍が江戸に向かってきている。鬼の奴らも一緒に来ているはずだ。これからの戦は俺達幕府軍が不利な状態になるだろう。…そんな中、安心して千鶴を任せられるのはお前しかいない」

土方「千鶴を頼むぞ」
山崎「承知いたしました」
山崎さんの声には、いつもの張りが戻っていた。
土方「近々、甲府に出陣することになる。お前達も行軍についてきてもらう。相手は新型の武器を持っている。怪我人も多く出るだろう。お前達の力が必要なんだ。……すまねえな」
山崎「何をおっしゃるのですか!新選組の一員として戦える事を誇りに思います」
千鶴「私もできることを精一杯努めます!」
土方「そんなに意気込まなくていいんだぜ。とにかくだ、この任務は非常に重要である。しっかり頼んだぜ?」
そう言い残すと土方さんは部屋から出て行った。
隣にいる山崎さんが一度立ちあがり、そして私の前に座り直した。
山崎「雪村君。君の護衛役を仰せつかった。俺は君を必ず守る」
千鶴「よ、よろしくお願いします!」
【必ず守る】という言葉に私は恥ずかしさを覚え、俯きながら答えた。
そのまま上目遣いで山崎さんの表情を覗いてみると、先程までと打って変わり生き生きとしていた。
新選組に居場所がないと思っていた彼に、彼にしかできない任務を土方さんは用意してくれたのだ。私は自分の事のように喜び、胸をなでおろした。
 

 

選択肢を設けるという冒険に出ました。
できれば皆さまには一度、自分が選んだ選択肢通り突き進んでいただきたいです。
BADENDもあるのでご注意(笑)

あと、苦しんでる山崎さん、文章上、凄く元気そうに長分セリフになってますが、
実際はかなり苦しんでかすれ声でしゃべってます。もっとつっかえつっかえでしゃべってます。
ただそれを文字にあらわすと、ものすんごーく読みにくくなってしまうので、本当に強調したいところ以外は普通に会話させてます。
苦しみながらこれらのセリフをどう読むか。それは読者様自身でお決めください(笑)
 

 

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