薫さんに付いて行かない

 

 

 

千鶴「大事な話……あの、でも、急な話で、でも……その……」

私は迷っていた。私は薫さん付いて行かなくてはならない気がしていたからだ。
もちろん、薫さんと双子だと言われ、頭が混乱していることもあるだろ。
しかし、私の心の中で何か渦巻いている。今まで感じた事がないような醜い感情。
彼女の先にはこの渦巻く感情の真実が見えるのではないか。私は「知りたい」と思ってしまった。自分の事、薫さんの事。でも……
千鶴「私……」

山崎「雪村君?ここで何をしているんだ?」
突然、後ろから低い声が聞こえてきた。その声を聞き、何故か私はホッとした。
千鶴「山崎さん!」

薫「そうね、急に言われてもあなたは困るわね。また会いに来るわ。待ってて千鶴」
千鶴「薫さん……」
山崎「俺は何か邪魔してしまっただろうか?」
薫さんが去り、山崎さんは私の横に歩み寄る。

千鶴「いえ、その、今私は何かに取り憑かれていたような感じがしたんです。山崎さんが声を掛けて下さらなければあのまま薫さんに付いて行っていた気がします」
山崎「何者なんだい?あの者は」
千鶴「以前、京で巡察中に出会った方で、南雲薫さんといいます。沖田さんは私と薫さんを並べて「似ている」と仰っていたのですが……彼女が言うには、私は薫さんの双子の妹だと……」
山崎「双子!?しかし確かに遠目ではあったが、先程の彼女は君に似ていたように見えた。双子と言う話も納得が行くが……ただ、一人で出て行くということは感心できないな」
千鶴「はい、その通りだと。でもさっきの私は何か違ったんです。何か心の中で渦巻く感情があって、自分が自分でないような……自分が怖くて……こんなにも醜い感情が渦巻くのかって。その理由もわからず、混乱してしまって」

座り込んでしまった私にそっと頭にぬくもりを感じる。
山崎「今君は混乱しているだけだ。もう少し時を置いて落ち着けばいい。そうした後、不安な事があれば俺に言ってくれ。俺達は隠し事をしないと約束しただろう?」
千鶴「そう、ですよね……約束、覚えていて下さったんですね」
山崎「当たり前だ。『約束』なのだから」
千鶴「山崎さん……」
私は嬉しさから、口元が緩み口角が上がった。
山崎「そうだその顔だ。それが君に一番似合う。とにかく今日は早く自室で休み、落ち着くといい。後で粥でも持っていこう」
千鶴「そそ、そんな……」
山崎「俺がつくる粥が嫌ということか?宿の者に頼むから味は保証するが……」
千鶴「いえその、そのことではなく……」
その顔が一番似合う。こんな嬉しい言葉に頬は上気せざるを得ない。
山崎「君の部屋まで送ろう。あまり考え込まず、自分に素直になればきっと楽になる」
千鶴「山崎さんのお陰で冷静になれそうです。ありがとうございます」

 

 

翌日。会津を発った旧幕府軍が仙台へとやってきた。

大鳥「やあ土方君!」
土方「大鳥さん。無事だったか」
土方さんは懐かしい顔を見つけたようで、声がした方へと歩みを進めた。

千鶴「あの方は?山崎さんご存知ですか?」
山崎「あのお方は大鳥圭介様。歩兵奉行。今戦いの指揮官にあたる方だ」
千鶴「つまり、総大将ということですか?」
山崎「そう言って差し支えは無いだろう」

柔和な笑顔を見せる大鳥さん。彼が今回の総大将。
新選組の総大将であった近藤さんとは全く似かよる場所が見当たらない。

土方「それで、会津戦争は……斎藤達はどうなった……」
大鳥「それが……斎藤君に関しては、行方不明、なんだ……」
土方「行方不明!?」
大鳥「やはり薩長の会津への憎悪は凄まじいものがある。母成峠での激戦地で指揮を執っていた斎藤君の姿を見つけに行く事すら許されない。それだけ凄まじい戦いだった。すまない、土方君」
土方「いや、大鳥さんが謝ることではないが、そうだとすると……」
大鳥「斎藤君は行方不明ということだけど……」
大鳥さんは後悔の表情をして下を俯いた。
千鶴「そんな……!」
山崎「斎藤さんまで……」


数日後。
それまで旧幕府軍の入城を拒んでいた仙台城だったが、突如、話が変わった。

土方「榎本さん。これはどーゆーことだ?」
榎本「先程、密書が届いて、至急入城せよとだけ……」
土方「おいおいおい、まさか子供騙しのような罠にでも引っ掛けるつもりか?仙台藩は」
榎本「さすがにそれは考えにくいが……」

島田「失礼いたします」
土方「島田か。入れ」
島田さんは榎本さんに聞かれぬよう、耳元で報告する。その報告に土方さんの目が見開いた。
土方「……榎本さん、俺達二人で行って何かあったら洒落にならねぇ。この件、まずは俺に一任させてくれないか?」
榎本「そうだね。詮索はしないが、私が行くより、君が行く方がよさそうだからね」
土方「すまねぇ榎本さん」
土方さんはすくっと腰を上げ、部屋を出て行った。
お茶を渡すタイミングを逸し、廊下をうろうろしていた私は土方さんと鉢合わせになる事が気まずくて咄嗟に廊下の柱に隠れた。


+++


その日の夕方、土方さんは仙台城へと足を運んだ。
土方さんを待っていたのは、藩主の側近、上級藩士だった。
藩士「これだ……これが問題の文だ」
『我らは旧幕府軍にも新政府軍にも属さぬ者。新たな国をつくるのは今や好機。我らは貴殿らの城を手にせねばならぬ。無益な争いは避けたい、即刻、城から出て行くことを信念する。  山南敬介』
土方「ふざけた悪戯だな」

藩士「悪戯であってほしいところではあるが……この山南敬介という者、元は仙台の脱藩浪士で、新選組に身を寄せていたと聞く。お前はもちろんこの者を知っているのだろう?」
土方「ああ、よく知ってるよ」
藩士「しかし既に死亡しているとも聞き及んでいるのだが……」
土方「今さら機密も何もないか。山南さんなら生きてるよ、今は行方不明だけどな」
藩士「っな!では、お前は、この文の真の意図が分かるか?」
土方「……大体はな。確証はないが、無視できる内容だとは思わねぇな」
藩士「そうか……もしもの時の為だ、君達幕府軍の入城を認める。その代り、仙台とこの城の防御にも協力してくれ」
土方「ああ、それでいい」

+++


土方「新選組集合」
千鶴「一体なんでしょうね?」
山崎「俺にも見当がつかない」
全員揃った所で、土方さんは少し呆れたような口調でこう言った。
土方「仙台藩主から、至急仙台城に入城せよとの命が下った」
千鶴「入城って……今まで散々断っていたのに?」
私が口にした疑問は、当然他の隊士も抱いているはずだ。皆、納得がいかない顔をしている。
土方「まぁ、色々あってな。とりあえず、明日から新選組は仙台城および市中の守備に付く。以上だ」
隊士「はい!」

 

 


いい加減恥ずかしくて死にそう。更新を躊躇う恥ずかしさです(笑)
なんで恋愛シュミゲーの二次創作なんてやろうとした。スゲー後悔中!しかも需要ほとんどない山千とか・・・・・・読んでる人いるん?コレ。
だがやると決めたからには最後まで書ききって見せる!ああでも恥ずかしくて死ねる。
薫を出してみました。
山崎さんといえばやはり沖田さんは外せませんし、沖田さんといえば薫は外せませんということで(?)
土方ルートから派生した山崎ルートではありますが、薫を出すことで少しはスパイスになっているといいな……
史実丸無視の超展開が続きます。みんなついてきて!(笑)

 

選択肢に戻る 其の弐に進む 薄桜鬼部屋に戻る