第八章「幾千の絆」 其の壱

 

 

 

私達は仙台へと到着した。
仙台藩は奥羽越列藩同盟の盟主。士気も高いはず。会津では敗走を重ねたが、今度こそ新政府軍と渡り合える。そう思っていた。
しかし……

榎本「何やら、新政府軍から圧力が掛っているようだ。いくら謁見を求めても返事すらない」
土方「仙台ですら弱腰ってわけか」

仙台藩主は戦いに乗り気ではないようで、幕府軍の入城を拒んできた。
会津での敗戦を聞いてしまえば、新政府軍に恭順しようと考えるのも仕方がないことかもしれない。
この数日後、奥羽越列藩同盟は崩壊することになるのだから。

ひとまず、私達は仙台城下にある宿泊所に逗留する事になった。
その日、私は玄関の前で花に水をやっている所に声を掛けられた

???「千鶴さん……ですよね?覚えていらっしゃるかしら?」
千鶴「か、薫さん!?なんで薫さんがここに!?」

白い肌が映える美しい着物に、綺麗なかんざし。南雲薫さん。京で会った時と何も変わらない美しい女性がそこに立っていた。

薫「私、元々仙台の出身なのです。京には人を探しに行っておりまして……でも此度の戦で京は戦場になるからと、人探しを断念して、実家に戻ってきたのです」
千鶴「そうだったのですか……」
薫「千鶴さん、もしや未だに新選組の方と供にしておられるのですか?」
千鶴「はい、悲しい別れはあったけれど、あそこには私の居場所があるんです」
薫「居場所……そうですか」
何か考え込む薫さん。一体どうしたのだろう。


薫「実はね、今ここであなたとお話ししている事、これは偶然ではないの」
千鶴「え?」
薫「言いましたよね、人を探していたと」
千鶴「はい……」
薫「探していたのは、千鶴、あなたですよ」
千鶴「私!?なんで?薫さんが?」

薫「本当に覚えてないのね。あなたは私の双子の妹なのよ?」
千鶴「え?双子?妹?え、ええっ??」
薫「ごめんなさい。京で貴女に会った時、ちゃんと話せていれば……でも新選組と一緒にいるようだったから……」
千鶴「あ……」
薫「なんで貴女が新選組と一緒にいるのだろうって。ゆっくり話すのが躊躇われて。そのまま戦が始まってまた貴女の行方が分からなくなってしまって。私はとても後悔したわ。けれど、仙台に新選組が来ていると聞いて、もしやと思ってここに来てみたの」
千鶴「薫さん……」
薫「あなたに大事な話があるの。ここから少し歩いて行った所にある村なのだけど。付いてきてくれないかしら?」

双子……つまり私と薫さんは姉妹ということになる。
京で沖田さんが私達を「似ている」と評した事も、これなら納得がいく。
けれど、どうして私達は離れ離れになったのだろう?きっと深い事情があるのだと思う。百聞は一見に如かず。きっと薫さんの言う村に私達の過去を知る手立てがあるのだろう。
私はどうしたらいいのだろう……

 

薫さんに付いて行く
薫さんに付いて行かない

 

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